内田鐵工所の作業工程
下の写真は 東京に建てたビルの鉄骨建て方中の写真です。
この建物が出来ると銀行が入る様に建設していますが、内田鐵工所はこのビルの鉄骨の部分だけを製作しています。工場で製作した鉄骨を現場に送り、現地で組立をして途中までになっている状態です。
これからみなさんとこの様な建物を作るには、まずどの様に作るかをしばらくおつきあいしていただきたいと思います。
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設計・現寸作成
鉄骨製作の流れ
赤枠のついた部分をクリックしていただきますと、画像がご覧いただけます。
客先(ゼネコン)からの依頼により、設計図書から構造物の鉄骨製作に重点を置き、製作要領、工作図を作成します。それぞれに監理者の承認、承諾をへて鋼材発注に至り工場への鋼材入荷となっています。 設計図書および関連準拠図書を基準に作成した工作図からさらにそれぞれに部材用途の鉄骨加工詳細図をCADシステムを活用して工場製作へとなっています。
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3D表示
左側の工作図を当社では施工図と呼んでいます。 物件に応じたこの施工図は、平面矢視の図面と、立面を定めた方向から矢視した図面より鉄骨製品を確認します。俗に呼ばれる建築用語で部材を示唆されたり、洋風的な呼び名で部材を表記する為、慣れるまでに戸惑いがあることもしばしばありますが・・・。 その両図面を3D表示で確認をし、あらゆる角度から鉄骨の状態を表す事でもっとより原型を解りやすく建物を描けるCADシステムを有効に活用して作図を行なっています。
鉄骨加工詳細図の作成
工場で製作するにあたって施行図だけでは細かな部分の部材接合、業界用語で言う【オサメ・おさまり】が解りにくいので、柱、梁、から小さい部材や接合プレート等をCADで管理し、原寸を起こして構造物の製作管理をしております。(原寸作業) その原寸作業からのおさまりを個所ごとの指示を表記した加工詳細図を設計側から加工側に伝わりやすい加工詳細図になるよう、苦労は絶えませんが日々の努力をしております。
上記は柱詳細図と梁詳細図です。工場ではこちらをベースに必要な部材を準備し、寸法精度を確認して製作しております。図面の詳細の説明は話が長くなるのでここでは控えておきます。くわしくは当社にて図面を眺めながらでも。
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工場製作順
一次加工
(1)材料入荷
H型鋼は大型トラック(10t)かトレーラー(25t)で運ばれ第二工場に入荷します。柱、梁とブラケットに加工します。写真の材料のサイズはH-900×250×16×28で7mの長さで鋼材1台≒1526kgの重量になります。毎回同じ材料ではなく、工事ごと使用目的ごとに変わりますので必要な分だけ工場に運ばれてきます。
(2)H鋼の呼び方と確認
H鋼のサイズの事ってご存知ですか?作業者が測っている場面でありますがH-900(サイズ)×250(フランジ幅)×16(ウェブの厚み)×28(フランジの厚み)で見ます。他のサイズの物や納入予定外などトラブル予防の為に鋼材の確認をします。このサイズを確認しないと、機械設備での加工時に困ってしまいます。
(3)1次加工(孔明け切断) 【第二工場】
H鋼のウェブ面を上に向けて6BHで孔明け加工をし切断位置をマーキングします。
マーキングの場所をバンドソー(HK-1000CNC)でH鋼を切断します。この加工ラインは材料をセットしデータ入力となっていますので機械が仕事をしてくれます。作業者の任意入力も可です。
ただし、機械のメンテナンスをしっかりしないと製品精度は落ちるでしょう。
(4)H鋼開先加工 【第二工場】
切断されると梁には製品マークを記入、ブラケットは管理番号をそれぞれ図面管理とリンクしてます。
ブラケットはほとんどが柱の部品となるため第一工場に運搬しますが、溶接接合するためにフランジ先端部を35度に削ります。開先加工機で35度に削りながらスカラップも削ってしまいます。 開先加工をした所は完全溶込み溶接の目的で加工されます。
柱 製作
(1)コラム入荷~コア製作 【第一工場】
(2)サイコロロボット溶接中
(3)コア組立】
(4)コア溶接作業(完全溶込み溶接部)
コラム材は柱の材料となるので第一工場に入荷されます。発注段階で決められた切断長さと開先角度35度となって入荷され、このコラム材は加工図面を見て加工手順ごとに柱の製作をしていきます。 呼び方としてはシャフトとも呼ばれますが短く切断されたコラム材はサイコロと呼び、各階の役目の加工します。このサイコロが梁と接合されるコアと呼ぶブラケットが溶接される部分の大事な役目になります。 加工順はサイコロを組立てて溶接ロボットで溶接作業を行ないます。 サイコロ溶接後はコア組立てを行ない、溶接作業は完全溶込み溶接となり溶接部は超音波検査で社内検査を行ないます。(検査はのちほど) ~柱大組加工につづく。
※ 赤字は業界用語です。
(5)柱 大組 【第一工場】
コア溶接が終わるとシャフトとコアを組立てる大組作業に移ります。加工図を確認しながらルート間隔7㎜と開先角度35度をキープして柱の長さに組立てます。組立て後は溶接ロボットにて溶接しますが、自動溶接が不可であれば作業者が接合部の溶接を行ないます。
※ 赤字は業界用語です。
溶接ロボットは合計4台ありますが、ロボット溶接が対応出来ない場所は作業者が溶接をします。
溶接継手の中で隅肉溶接を施す箇所はロボットに教示させるより、効率の良い作業者で行ないます。部品は大組ロボット溶接が終わった後に図面を確認しながら組み立てます。(二次部材の組立て)
柱 製作順は以上となって、仕上げ工程へ移ります。
梁 製作
(1)梁組立て前 【第二工場】
1次加工された梁材は1台ごとにショットブラストをかけます。目的は鋼材に付いている黒皮と呼ぶサビ防止を落とす事と、他に油やサビを落とす目的できれいにします。
ショットブラスト入口にセットすると自動でブラスト作業を行ないます。
※ 赤字は業界用語です。
(2)梁組立て中 【第二工場】
製品マークが付いた梁材と図面を確認してプレートの位置、番号を梁材に直接書くこの作業をケガキ作業と呼びます。ケガキ後は図面と同様にプレートを組み立てますが、溶接は組立て溶接になるので、全周溶接は行わず、溶接長さは40㎜以上になる様に溶接を行ないます。
※黄色線のみの溶接をします。赤枠はプレート番号が書いてあります。
※ 赤字は業界用語です。
(3)梁溶接作業 【第二工場】
梁組立て作業後は溶接作業者が細かな所まで溶接作業を行ないます。溶接サイズと溶接外観が重要になる隅肉溶接を行ないます。
※ 赤字は業界用語です。
梁 製作順は以上となって、仕上げ工程へ移ります。
検査 仕上げ・塗装
(1)社内検査
製品を仕上る前に社内検査を行ないます。完全溶け込み溶接部は超音波で溶接部の状態を検査します。もしも溶接内部に欠陥があれば欠陥の部分を取り除いて再溶接をします。
また、詳細図を確認しながら寸法や取り付け位置が合っているかを確認してミスが無いかを調べます。こちらもミスがあれば図面通りに修正して再度修正した所を検査してから仕上げます。
(2)ケレン作業
社内検査が終わった後は柱 塗装ヤード、梁 塗装ヤードに製品が移動します。塗装が不要な箇所はマスキングを行なって、ペンキの付着を防ぎます。
また、溶接をした部分のスパッタをケレン棒にてきれいに除去をし、たわしでほこりやスラグを掃い落します。この仕上げをきれいにしないと、塗装後にきれいにならないので、仕上げが悪くなってしまいます。ケレン作業とマスキング(紙貼り)は全面おこないますので製品をクレーンにて反転しなければなりません。 塗装が無い場合はケレン作業のみで良いですが、製品製作の最後の加工になるのできれいに仕上げる様にしています。
※ 赤字は業界用語です。
(3)塗装作業【塗装ヤード】
ケレン作業が終わったらペンキをエアレスで噴きつけます。
この方法で塗装することでキレイに早くペンキを塗る事ができます。
また、ペンキの色は工事ごとに決まったペンキを塗るので、毎回同じではありません。
他に、ペンキの厚みも決められており、70μm(マイクロメーター)以上の厚みを出さなければならないので、ペンキを薄くぬってしまうと膜厚量がたりなくなってしまいますが、厚く塗りすぎてもペンキの量が増えてしまいペンキのダレによる仕上げ不良となるので、塗装時にはムラが出ない様に注意して作業します。 - 塗装が終了し塗料が乾いたら現場に送り出す準備をします。
梁はピース数が多いので、積み上げた状態になります。
この段階で梁の端部にスプライスプレートを付け柱との接合の役目となります。スプライスの取り付け方は現場によって変わりますが、仮ボルトを使用しての取り付けは同じです。スプライスを付け忘れてしまうと柱との接合が出来なくなってしまう為、付け忘れに注意が必要です。
※ 赤字は業界用語です。
(4)積み込み
(5)発送・建方
現場には必要なピース数を建方日に送りますが全数は送りません。リスト確認した製品だけを発送します。
工事現場はいろいろな条件の場所で建てられます。当然事故の無い様安全に進めなければなりません。鉄骨を送るだけではなく、現場サイドでの作業がスムーズに進むよう、事前計画を入念に関係業者を対象に建方検討会を開いて計画を確認します。
天候に左右されたり、思わぬアクシデントによって鉄骨工事が止まる事も実際あります。工場サイドも現場に不良製品を送らない様製品チェックを実施し、お互い協力をして鉄骨工事が円滑に進むように調整をしています。写真順の様に鉄骨建方を進めて行き、調整作業完了後に引き渡され、鉄骨工事が完了となります。
長い製作説明におつき合いいただきありがとうございました。